Business Structure

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レポート更新:2025/02/05

所在地

事業内容

主な予定日

目次

要約

# 概要

当社(以下、同社)は総合建設コンサルタント分野を中心とした事業を展開している持株会社であり、連結子会社群は主として官公庁の公共事業に携わっている。設立以降、合併や子会社化を通じた組織再編を積極的に進めており、同社はプライム市場上場企業として、安定した資本構造と高水準の自己資本比率を保っている。総合建設コンサルタント事業には、計画・設計・マネジメントから補償コンサルティング、測量、地質調査まで多岐にわたるサービスが含まれており、グループ各社はそれぞれの専門領域を生かして貢献している。公共投資の動向やインフラ関連の需要は中長期的な見通しが立てやすい一方、受注時期のずれが利益計上やキャッシュフローに影響を及ぼす面もある。  

同社の連結売上高は、過去5年間で30,394百万円から37,207百万円まで上昇し、着実な伸びを見せている。経常利益ならびに親会社株主に帰属する当期純利益は若干の減少が見られる局面もあるが、総合的には安定傾向にあると判断できる。ROEとROAはいずれも横ばいからやや減少気味で、収益性の伸びが鈍化した部分が推測される。一方、自己資本比率は65.2%から68.7%へと上昇しており、財務安全性の観点ではプラス要因といえる。また、配当性向は5.2倍から9.2倍に増加しており、親会社株主に対する利益還元への姿勢を示している。  

提出会社(同社グループ内の一社)の単体データでは、13期から17期にわたり売上高が増加し、17期には1,903百万円を計上している。経常利益も576百万円から1,439百万円へと拡大しており、当期純利益も559百万円から1,435百万円へと伸長している。資本金は2,000百万円から2,803百万円に推移し、着実な資本形成が行われている。一株当たり配当額も503円から555円へと拡大し、株主総利回りは371.1%に達する状況が見られる。自己資本比率は95.8%から98.9%の範囲で推移し、きわめて高い水準を維持している。配当性向は60.8%から60.0%への推移であり、業績の拡大に合わせた還元策が着実に実施されていると考えられる。  

同社の沿革は、2007年の株式移転による純粋持株会社設立に始まり、2009年の事業再編や2010年の株式交換などでグループ構造を拡張してきた経緯を持つ。2017年から2024年にかけては、地域に根差した建設コンサルタント会社を次々に子会社化・合併し、国内外で現地法人を設立して業容を拡大した。公共事業を取り巻く環境は、インフラ老朽化への対策や新規事業への投資が一定の継続性を持つため、同社グループには安定した需要が見込まれる。一方、受注競争の激化に伴う利益率の圧迫や、コスト高への対策は重要な経営課題となる。  

決算報告書と財務諸表の情報によると、同社の海外事業展開はグローバルなニーズ獲得とリスク分散を意図して進められており、円安局面での収益押し上げ効果が期待される一方、為替相場の変動が財務数値に影響を与えやすいという側面がある。今後は積極的な投資や提案力の向上を図りつつ、受注の平準化と利益率改善を両立できるかが焦点になる。同社グループの成長余地は大きいものの、適切な人員確保やエンジニアリング技術の底上げが不可欠であると考える。現時点では、手堅い財務基盤とインフラ需要を背景としながらも、競合との差別化戦略が将来の企業価値を左右すると想定する。  

# 業績動向:売上・受注をめぐる足取り

本セクションでは、決算報告書と財務諸表の数値を踏まえて、同社グループの売上高と受注の推移を整理する。いずれの数値も百万円単位に統一した。2017年度から2021年度までの連結売上高は、30,394百万円から37,207百万円に増加した。伸び率は概ね毎年2%~3%程度で推移しており、建設コンサルタント関連の公共事業需要が堅調に推移している状況を示唆する。  

受注面に関しては、公共事業の歳出予算や入札時期の影響を受けるため、年度ごとに受注額の変動幅がある。決算報告書によると、同社グループの主要顧客は国土交通省や地方自治体関連が大部分を占めており、同社が提供する調査・設計・マネジメントサービスはいずれも社会インフラ投資に欠かせない役割を担っている。近年では防災・減災分野の投資が高水準で推移し、河川や橋梁の補修・補強案件の大型化が見込まれている。一方、年度ごとに入札の競争環境が変化することで採算面に影響が及びやすく、採算管理を徹底できるかが鍵になる。アナリストとしては、単価競争に巻き込まれた案件比率や人件費高騰の影響を注視しつつ、慎重に利益率を見極める必要がある。  

2022年度から2023年度にかけては、一時的に設備投資関連の見直しが進行したが、国土強靭化政策の方針が継続し、各自治体のインフラ長寿命化の予算は比較的安定している。財務諸表の記載によると、同社グループでは既に海外における受注案件を拡充しつつある。ASEAN地域や中東でのコンサルタント業務が徐々に増えており、円安による受注競争力の強化も相まって、売上高のさらなる上乗せが期待されていると推察する。しかし、海外案件は契約形態や現地の労務管理が国内と異なるため、利益確保が難しくなる懸念もある。経験豊富な人材の確保が安定的な収益体制を築くうえで急務になると想定する。  

同社の売上高の増加は、グループ全体の拡張に伴うものが大きい。2017年以降、相次いで行われたM&Aにより、地域の建設コンサルタント企業や調査会社を子会社化した効果が顕在化している。とりわけ、橋梁点検や港湾調査など専門領域を持つ企業の買収によって、サービス範囲が拡張している点が特徴である。多様な案件を受注する能力を備えた点は強みだが、統合コストが利益率に影響を与える可能性も残る。十分なシナジーを発揮するには、組織再編のプロセスを丁寧に管理し、営業・技術部門間の連携を深める必要がある。  

一方、提出会社(同社の連結グループ内企業)の単体ベースでは、売上高が13期から17期にかけて漸増傾向にあり、13期の約1,725百万円(参考値)から17期には1,903百万円に拡大している。経常利益も576百万円から1,439百万円、当期純利益も559百万円から1,435百万円と順調な伸びを見せている。背景としては、既存顧客との継続的な取引拡大と、新たな技術コンサルティングの提供による単価アップが考えられる。特に、公共分野の補修・補強ニーズが高まるなかで、利益率の高いコンサルティング領域を確保していることが推定される。  

総合的に見ると、同社グループは売上高が伸びており、受注高もインフラ関連投資の堅調さに下支えされている。ただし、案件に応じて粗利益率のばらつきが生じやすい産業構造のため、効率的なプロジェクト管理が大きな課題になりやすい。アナリストとしては、今後の売上成長率と併せて、販管費の伸びや人材コストの抑制策を注視し、同社が持続的な収益性を確保できるかを見極める必要があると考える。  

## 事業概要と主力セグメントにおける詳細分析

### (1) 総合建設コンサルタント事業  

同社グループは、官公庁が発注する公共事業における企画、設計、施工監理まで幅広いサービスを提供する。中核となるのは建設コンサルタント業務であり、橋梁・道路・上下水道などインフラ整備に関わる計画立案から実施設計、工事監理まで一貫して手がける体制を整える。加えて、測量や地質調査といった調査部門も内製化しており、総合的なコンサルティングサービスを提供している。  

決算報告書によれば、グループ内で最も売上高が大きいのはこの総合建設コンサルタント事業であり、連結売上高の約60%程度を占める。国や地方自治体の予算配分によって需要が左右されるものの、社会インフラの老朽化対策や防災関連の投資が増え続けている現状では、安定的な受注が見込まれている。近年、橋梁やトンネルの長寿命化工事に付随する調査・設計案件の単価が上昇傾向にあるため、さらなる売上増加が見込めると推測する。アナリスト視点では、事業領域の垂直統合による競合優位性が高く、公共セクターの継続的な需要を確保しやすい点を強みと考える。  

### (2) 補償コンサルタント業務  

同社グループの第二の柱は補償コンサルタント業務である。用地取得や住民への補償交渉、補償金算定などの専門的なサービスを提供し、公共事業の円滑な進行を支援する。公共工事に関わる利害調整の複雑化や、コンプライアンス対応の高度化が進むほどに補償コンサルタントの需要は高まる。  

財務諸表のデータでは、この分野の売上構成比は連結ベースで約15%から20%程度にとどまるが、利益貢献度は比較的安定しているとされる。補償交渉の専門性やノウハウが評価されており、案件ごとの粗利益率は総合建設コンサルタント業務に比べてやや高い傾向がある。実績のある技術者や行政OBのネットワークが強みである反面、人材の定着と育成が課題になると予想する。  

### (3) 調査業務  

測量や地質調査など、インフラ整備の計画段階で不可欠な調査業務を担う。橋梁や河川、港湾などにおける地形や地質の調査を実施し、同社グループ内の設計業務や補償コンサルティングにも活用される。近年は3Dスキャンやドローンを使った先進的な計測技術が導入されており、同社グループではIT投資を積極化している。  

この調査業務は売上比率としては約10%程度を占めるが、上流工程である調査から設計・施工監理まで一貫したサービスを提供できる点が同社グループの強みを支えていると考える。競合他社は専門特化企業が多く、受注が限定的になる一方、同社はグループ内で需要を取り込むことができる。アナリスト視点では、こうした垂直統合モデルによって関連領域を包括し、グループとしての収益拡大を狙える構造に注目する。  

## 財務分析と資本構成

同社は純粋持株会社として、グループ各社を指揮・管理する立場にある。連結財務諸表を見ると、自己資本比率は65.2%から68.7%へと上昇しており、提出会社の単体ベースでは95.8%から98.9%という高水準を維持する。財務諸表の開示情報では有利子負債の抑制に努めており、追加の資金調達は主にM&Aの機会や大規模設備投資を行う段階で検討されている。  

資本政策の面では、過去数年にわたり安定配当を行っており、配当性向は連結ベースで5.2倍から9.2倍へと変化している。提出会社の単体ベースでも60.8%から60.0%へと推移している。配当の拡大は株主還元を重視する経営姿勢を示すとともに、低金利環境下で資本効率の高い活用策を模索する姿勢と捉えられる。アナリストの見解としては、キャッシュフローの安定性に加えて、グループ間取引で資金を効率的に循環させる統制力が高いと判断できる点を評価する。  

なお、同社はプライム市場上場であり、金融商品取引法上の特定上場会社に該当するため、インサイダー取引規制における株式の流動性や各種開示責任も負っている。そうした状況では、より透明性の高い経営が要求され、財務指標の安定性と適切なリスク管理を示すことが市場からの評価につながる。決算報告書によると、投資家向け説明会では今後の成長戦略として海外事業の強化と国内補償分野の深耕を重点に挙げており、自己資本比率を一定水準で維持しながら債務負担を増やさない方針が打ち出されている。  

## 沿革とM&A戦略

2007年1月に、エイトコンサルタント(株)と日本技術開発(株)の株式移転によって純粋持株会社として誕生し、同年6月には東京証券取引所に上場を果たした。2008年にはエイトコンサルタント(株)が計測事業を切り出して日本インフラマネジメント(株)に承継し、同社が株式を取得してグループ内に取り込む再編を行った。さらに2009年には日本技術開発(株)の建設コンサルタント事業をエイトコンサルタント(株)に移管してエイト日本技術開発(株)へ改称し、日本技術開発(株)をEJビジネス・パートナーズ(株)へ名称変更するなど、当初から積極的にグループ再編を進めてきた。  

2010年6月には株式交換によって近代設計(株)を子会社化した。2015年にはエイト日本技術開発(株)がEJビジネス・パートナーズ(株)を吸収合併するなど、グループ内部での事業一本化や効率化が進められている。2017年以降は北海道近代設計(株)やアークコンサルタント(株)、アイ・デベロップ・コンサルタンツ(株)などを傘下に収め、加えて海外拠点も整備して事業領域を拡張してきた。こうした再編と拠点拡大は売上規模の拡大に大きく貢献しているが、買収先企業との統合プロセスに手間がかかるため、管理コストの増加と人員確保の負担が生じる。  

M&A戦略の背景には、公共事業受注における多様な専門技術を取り込む目的があり、グループ各社が提携し合うことで、提案力の向上や受注チャネル拡大が可能になる。アナリスト視点では、インフラ関連ビジネスにおいて地域密着型企業の獲得が大きな意義を持ち、特に北海道や東北地方など積雪地域の特殊環境下での技術が求められる案件などで強みを発揮できる。この戦略を継続するには、人材・技術・知的財産などの統合プロセスを計画的に進め、買収先企業の企業文化に合ったガバナンスを敷く必要があると見ている。  

## 今後のリスクと展望

### (1) 市場環境リスク  

国内の公共事業は予算規模が比較的安定しているが、財政事情や政権交代による政策変更の可能性がゼロではない。景気後退局面でインフラ投資が抑えられる場合、受注機会が減少し、利益率が低下する懸念がある。海外事業では為替変動リスクや政治リスクが存在し、国際的な競争が激化する可能性がある。こうした環境変化に対して、同社グループがどの程度柔軟に対応できるかが課題といえる。  

### (2) 人材確保と労務リスク  

建設コンサルタント分野は技術者不足が長年の課題になっており、経験豊富な技術者の引き抜きや高齢化が進むことによる人材確保リスクが潜在している。特に海外事業や高度なIT・DX技術を用いた調査分析のニーズが増えるにつれ、多様な人材を獲得しなければならない。グループ全体で働き方改革を推進し、魅力ある職場環境を整備できるかが、長期的な成長を左右するとみられる。  

### (3) 競合リスク  

大手建設コンサルタント各社や独立系の専門企業との受注競争は、技術力や価格面で激しさを増すと推察される。調査・補償部門などでは参入障壁が相対的に低い領域もあるため、競合が増えやすいと考えられる。付加価値の高いサービスを展開し、単価競争に巻き込まれずに差別化する戦略が必要である。  

### (4) DX・技術革新への対応  

3Dスキャンやドローン計測のほか、BIM/CIMの導入など、建設業界のデジタル変革が進行している。これらの技術を上手く活用し、業務効率化と高精度な解析を実現できるかが、企業としての競争優位を左右する。技術投資のコスト負担もあり、効果を早期に収益へ繋げるマネジメント能力が問われる局面である。  

総じて、同社グループは国内外での需要を取り込みながら、堅調な財務基盤を背景に成長を続ける可能性があるものの、人材確保や技術革新への対応など多面的な課題を抱えている。アナリストとしては、インフラ投資の継続性とDX推進をキーワードに、受注の平準化と採算管理の両立を注視し、同社が将来にわたり持続的に利益を生み出せるかを評価していく。  

## 今後の戦略とアナリストの視点

同社は公共事業の領域を基盤として、補償コンサルティングや調査の分野まで垂直統合を図り、幅広いサービスを提供している。海外展開も徐々に進めており、ASEANや中東での建設プロジェクトに参画する動きがある。今後は、(1)国内公共事業の競争激化への対応と(2)海外での事業拡張をいかに両立させるかが課題だと考えられる。  

(1) 国内公共事業では、老朽化が進むインフラを改修・維持管理する案件が増えており、その分野での設計・コンサルティング単価は比較的高水準を期待できる。一方で、プロジェクトが長期化するため、受注から売上計上までタイムラグが生じやすい。受注残の管理やキャッシュフロー予測に加えて、人員配置の最適化が利益率に大きく関わってくる。  

(2) 海外では、JICA案件や現地政府主導の開発案件などで日系コンサルタントが高い評価を得る例もあるが、現地法人の設立やパートナー企業との連携が不可欠である。アナリストの見解として、同社が過去のM&Aで培った統合ノウハウを海外案件でも活用できるかが勝負どころとなる。為替リスクや政治リスクを管理しつつ、グループ全体で技術リソースを配分する組織体制を整備すれば、さらなる事業拡大が見込まれる。  

決算報告書にある事業計画書によると、同社は5ヶ年スパンでの収益計画を策定しており、売上高と営業利益の年平均成長率をそれぞれ3%前後で見込んでいる。また、財務諸表の資金計画では、配当を安定的に維持しつつも自己資本をさらに高める方針を提示している。アナリストとしては、国内のM&Aをある程度進めつつ海外案件の比率を高める戦略が利益率向上の要となると推定する。DX投資や先端技術への対応も重要課題であり、将来的に3D計測サービスやデータ解析事業の外販化まで視野に入れれば、新たな収益源を創出できる可能性がある。  

もっとも、建設コンサルタント産業は労働集約的であり、人材力の差が受注力と信頼に直接つながる。そのため、技術者の育成と働く環境の整備を怠れば、優秀な人材の流出につながるリスクが大きい。公共投資が安定している今こそ、経営戦略として人材開発への投資を強化し、長期的な発展基盤を築くことが必要だと判断する。  

## 結論

同社グループは国内公共事業を中心とした総合建設コンサルタント事業の展開により、安定的な売上基盤を築いてきた。過去のM&Aと積極的な再編を通じて地域密着企業や専門技術を獲得し、提案力やサービス領域を拡大している。さらに、海外展開にも力を入れつつ、財務面では自己資本比率の高さや堅調な配当政策を武器に市場からの信頼を獲得している。  

アナリストとしては、同社の強みである幅広いコンサルティングサービスと高い財務安定性が将来にわたり継続的な成長を下支えするとみる。しかし、公共事業の入札競争や人材確保リスク、DX導入のコストなど複数の課題も存在する。特に、海外事業の拡大は大きな成長ドライバーになり得るものの、政治・経済情勢に左右されやすい側面があるため、現地環境を考慮した慎重な戦略運営が必要と考える。  

全体として、同社グループはインフラ整備需要の安定性と事業領域の多角化によって安定成長が期待される。しかし、技術者の確保やプロジェクト管理能力の向上、国内外での合併企業の統合推進など複数の挑戦を伴う見通しである。今後は株主価値向上の視点から、適切な財務バランスを保ちながら成長余地を追求できるかどうかが評価の焦点になる。アナリストとしては、売上と利益の伸び率だけでなく、プロジェクトの受注ポートフォリオや人材マネジメントへの取り組みに注目し、継続的にモニタリングしていく予定である。  

以上、決算報告書と財務諸表の情報を加味して総合的な分析を行った。今後も同社グループが国内外における建設コンサルタント業務で強みを発揮し、株主価値の向上と社会的役割の拡大を実現できるかを注視する。