E・Jホールディングス
レポート更新:2025/02/05所在地
岡山県岡山市北区津島京町三丁目1-21
事業内容
グループ全体の最適化を図るための企画・運営・管理等を行い、傘下会社の業務執行を管理・統括し、グループ全体の経営を統括する
主な予定日
主な予定日が設定されると、こちらに表示されます
目次
要約
(1) 事業概要
当社は純粋持株会社としてグループ全体の経営管理と戦略立案を担い、連結子会社が官公庁を中心とする建設コンサルティング業務を手広く行っている。決算説明資料や財務諸表によると、インフラ整備や老朽化対応、防災関連などの公共投資需要が堅調であることを追い風に、グループとして売上高が右肩上がりに伸びてきた。特に総合建設コンサルタント事業を主軸としながら、補償コンサルタントや調査業務を組み合わせることで、公共事業の幅広いニーズにワンストップで応えられる点が強みである。最近はM&A戦略によって地域企業を傘下に収め、各地域での受注拡大を狙う動きが目立つ。加えて海外においてもアジア圏を中心に現地法人を設立し、道路や上下水道などのインフラ案件を受注しており、国内外で業容を拡大する方針を鮮明に打ち出している。公共投資が安定している一方、入札競争の激化や人材確保の難しさなどを背景に、利益率の伸び方は緩やかだが、連結子会社相互の連携強化やDX投資による効率化で中長期的な利益成長を目指す姿勢がうかがえる。
(2) 業績動向
当社グループの連結売上高はここ数年間、約30,394百万円から37,207百万円へ上昇し、公共事業を中心とした安定基盤の上で、地方自治体の防災案件や海外案件などを取り込みながら着実に成長を重ねている。経常利益はおおむね4,700百万円前後で推移しており、直近は4,597百万円である。補償コンサルタントや調査業務など高付加価値領域の比率が増加している一方、人材確保に向けたコストと先行投資が負担要因になり、利益率の向上は限定的になっている面もある。ただし、決算説明資料や財務諸表によると資本構造は安定しており、自己資本比率が65%超に上昇するなど、財務体質は堅実な水準を保っている。
(3) 今後の注目点
老朽インフラの改修や防災ニーズは国内外で拡大するとみられ、総合建設コンサルタントとしてのノウハウを生かして、より大型かつ長期の案件獲得に期待が高まる。国土強靭化政策や地方創生関連施策が続く国内に加え、海外でもアジアを中心にインフラ需要が高まっており、現地法人を拠点に受注拡大を図る方針を進める。当社グループはDXやAIを用いた新技術を導入し、人手不足の中でも効率的に案件をこなす体制を目指している。配当性向はおよそ60%で安定しているが、M&Aや海外投資に資金を振り向ける動きもあるため、株主還元とのバランスをどう維持していくかが今後の関心事項である。
事業概要

(1) ビジネスモデルの概要
当社は純粋持株会社として、公共事業分野を中心に調査、設計、補償コンサルタント、施工監理など幅広いサービスを提供するグループ企業を統括している。グループ内での役割分担は明確であり、エイト日本技術開発(株)や近代設計(株)といった連結子会社が総合建設コンサルタント事業の中核を担い、それ以外の子会社が補償コンサルタント業務や調査業務を手広く担当する形になっている。官公庁の公共事業は企画から設計、入札、施工、そして補償や検査まで多岐に及ぶため、当社グループはすべての工程をカバーできる体制を整えることによって、発注者である官公庁に対してワンストップ型のソリューションを提示している。
例えば道路や橋梁の改修案件では、事前の測量や地質調査を行い、補償交渉や環境アセスメントを挟みながら設計プランを作成し、施工段階では監理や安全管理支援を行う。竣工後の点検や維持管理にも関与できるため、プロジェクトのライフサイクル全般にわたりコンサルティングを継続するモデルが築かれている。こうした包括的支援体制は受注金額が大きくなる特徴がある一方、人員確保や技術投資の継続が欠かせない。実際、決算説明資料や財務諸表によると、人件費はグループ全体で大きな比重を占めており、技術者の確保や育成が経営上の大きなテーマとなっている。
さらに、近年は老朽インフラの更新需要が高まるなか、防災・減災の重要性が増している。河川改修や耐震補強、トンネルの老朽化対策などが盛んに議論され、政府や自治体は定期的なインフラ点検や補修を強化する方向へ舵を切っている。これに伴い、当社グループには調査から施工監理までのワンストップサービスが求められる場面が増加しており、特に橋梁やトンネル、ダムといった大規模構造物の計測や分析には高度な専門知識が必須になっている。補償コンサルタントの領域では、用地取得や交渉を巡るスムーズな対応がないと工事全体の遅延リスクが高まるため、当社グループのように多様な専門家を擁している企業へのニーズは引き続き堅調と考えられる。
海外ビジネスでは、アジア圏を中心にインフラ需要が著しく伸びている。道路や上下水道、港湾、空港などの整備を加速させたい新興国や発展途上国が多く、日本のコンサルティング技術や品質管理への信頼が高い。この状況下で当社は現地法人を設立し、日本式の防災技術や補償ノウハウを海外に適合させて提案する戦略を展開している。ただし、政治リスクや為替リスク、現地の法規制などを考慮したうえで段階的に進出しており、現時点での海外売上比率はまだ大きくない。将来的には日本国内だけに依存しない収益構造を築くために海外展開を強化する方針を明確化している。
ビジネスモデルの大きな特徴は、公共投資を中心としながらも、調査・設計・補償・施工監理をグループ内で一元化している点である。一般的な設計会社や測量会社だと対応できない補償コンサルタントや複数技術領域の統合が当社の強みであり、公共事業の安定需要に支えられながらも受注案件の単価拡大が狙いやすい構造といえる。一方で、人材集約型ビジネスであるため、労務管理や組織運営にコストがかかり、入札競争が激しくなれば利益率が圧迫される側面も見逃せない。グループ各社が持つ専門性の相乗効果と、各地域に密着した営業力を掛け合わせることで、安定した収益基盤と成長余地を両立しようとしている点が当社のビジネスモデルを象徴している。
(2) 主な事業セグメント
当社グループの事業は大きく分けて、(1)総合建設コンサルタント事業、(2)補償コンサルタント業務、(3)調査業務の三つに整理される。総合建設コンサルタント事業はグループ売上の中心を担い、官公庁の公共案件での企画、設計、施工監理、発注者支援などを総合的に実施する。道路、橋梁、河川、上下水道、トンネルなどの公共インフラを対象とするケースが多く、各案件は長期にわたり進行するため安定的な売上計上が可能である。入札競争はあるが、専門性が高く、一貫対応できる企業は限られている点が強みになっている。
補償コンサルタント業務は、公共事業に伴う用地取得や地権者との交渉、補償額の算定などを支援するセグメントである。公共工事の円滑化にとって不可欠な作業だが、法的知識やコミュニケーションスキルが必要とされるため、経験豊富な人材が極めて重要な役割を果たす。補償交渉に不備があるとプロジェクト全体の進行が滞り、費用が余計に膨らむリスクがあるので、官公庁としても信頼できる企業に任せたいと考える傾向が強い。当社グループには長年の知見を持つ専門チームが存在するため、このセグメントでの受注が売上だけでなく当社の評価向上に寄与している。
調査業務は主に測量や地質調査、環境影響評価などを含む領域であり、建設コンサルタント業務の出発点となる部分を担っている。地形や地質、河川流域の特性を把握し、それを踏まえて設計プランに反映するプロセスが不可欠である。近年はドローンによる空撮や3次元レーザー測量の活用が増え、精密なデータ取得と解析が求められる場面が増えている。防災や減災を目的とする観測・調査の需要も伸びており、環境保全の観点から法的規制が強化される流れと相まって、今後も着実な需要が見込まれる。計画立案段階からしっかり調査を行うことでリスク低減を図る官公庁が増加している点も好材料といえる。
各セグメントは相互に密接な関連性があり、たとえば補償コンサルタントや調査業務で得た知見が総合建設コンサルタント事業の設計フェーズで活用されるなど、グループ内で強いシナジーを発揮しやすい。調査→設計→補償→施工監理というプロセスを一貫して対応できる企業は限られており、そこが当社グループの優位性を支える重要なポイントになっている。決算説明資料によると、近年は補償や調査の比率を高めることで利益率を引き上げる戦略が一部進行中であり、総合建設コンサルタント事業と組み合わせて付加価値の高い提案を行う姿勢がうかがえる。
売上高の面では総合建設コンサルタント事業が大半を占めるが、補償コンサルタントと調査業務が公的機関からの評価や専門性の高さを示すキーセグメントとして機能しており、企業ブランドの向上にも寄与している。さらに海外事業においては、調査や設計、補償などをセットにしたサービス提供が現地政府や発注者にとっても魅力的であるとされ、海外拠点の業績拡大にもプラスに働く可能性がある。こうしたセグメント別の強みを複合させ、国内外での受注増加を狙うのが当社グループの事業モデルといえる。
また、セグメントごとの売上や収益性には年度ごとの変動が生じる。公共事業は予算執行や政治的決定に左右されやすく、大型案件の受注時期によって数字が大きく変わる場合がある。補償コンサルタントや調査業務は単価のばらつきが大きいが、大きな案件がまとまると全体利益への寄与度が高い。グループ内でノウハウの共有や受注情報の連携を行い、特定分野の案件だけでなく総合的にプロジェクトを手がけることで、年間を通した安定稼働を目指している点も特徴である。
(3) 同社の市場ポジションと競争優位性
当社は公共事業を手掛ける建設コンサルタントのなかでも、補償コンサルタント業務や調査業務をバランスよく取り込んでいる点が際立っている。大手ゼネコンや大手コンサルタント企業と比べると企業規模は中堅クラスに位置づけられるが、積極的なM&Aや地域企業の傘下化によって全国対応能力が向上している。東京や大阪など大都市圏だけでなく、北海道や東北、九州など地域特化の企業を取り込むことで、地方自治体の案件を獲得しやすくなり、競合が少ない領域での受注を増やしている。
補償コンサルタント分野における交渉力と法令知識は官公庁からの信用を得るカギであり、当社は長年にわたる実績と専門人材のリソースを武器に複雑な交渉案件にも対応できる。これによって、道路・橋梁・下水道整備など大規模プロジェクトの事前交渉をトータルで担える体制を整備している。調査業務でもドローンや3D計測技術を導入し、地形データや気象データを解析した防災提案に強みを持ち始めている。こうした高度な技術を裏付ける人材と設備を確保することで、単なる土木設計会社以上の総合コンサルタントとしての差別化を図っている。
また、公共投資の長期的な計画に合わせて安定的に案件を積み上げられる立ち位置にあるため、財務体質が強化されやすい。自己資本比率が高水準になっている事実は、市場ポジションの安定化にもつながる。さらにプライム市場に上場していることで投資家からの資金調達も行いやすい環境があり、大きな設備投資やM&Aなどに挑戦する余裕が生まれる。海外ではアジア圏を中心に日本の高い土木技術や品質管理が評価されており、当社グループは補償や調査業務まで含めたオールインワンのサービスを展開することで現地企業との差別化を図り、追加的な収益を狙える優位性を持っている。
防災や減災への意識が高まる時流も当社に有利に働いている。地震や水害、土砂災害などの被害が頻発する日本では、老朽インフラの更新と防災インフラの整備が急務となっており、これらのニーズに総合的に応える体制を整えた企業は限られている。補償、調査、設計、施工監理を一貫提供できる当社は、発注者から見てプロジェクト管理の手間を減らせる点が高く評価されやすい。こうした背景を踏まえると、当社の強みは公共投資需要が底堅い局面でより顕在化し、競争優位を固める推進力となっている。
他方、業界最大手企業やゼネコンとの競合が激化する入札では価格面で苦戦する可能性もある。しかし当社は特定地域や防災関連など専門性の高い領域に軸足を置くことで、価格競争だけに依存しない受注を目指している。実績を積むにつれて入札時の評価点も上昇し、より大規模で複雑な案件に参加しやすくなる好循環が見え始めている。このような方針により国内市場での地位を高めつつ、海外展開による成長余地を獲得しようとする戦略が、当社の市場ポジションをさらに強固にする展開につながる可能性がある。
(4) 市場の背景
日本の建設コンサルタント市場は、少子高齢化と財政制約を抱えながらも、老朽化したインフラの改修や防災対策への需要が旺盛である。国土強靭化基本計画やインフラ長寿命化計画などが推進され、橋梁やトンネル、港湾施設、上下水道などの更新案件が増加する見通しがある。特に橋梁やトンネルは高度成長期に集中的に造られたため、今後10~20年程度のあいだに更新や補修需要がピークを迎えると推定されている。また、自然災害対策として河川の堤防整備や土砂災害防止のための擁壁工事なども優先課題になっており、防災分野での予算措置が拡充される動きが続いている。
海外市場に目を向けると、アジア地域では急激な都市化や経済成長を背景に、道路や橋梁、鉄道、港湾、空港などさまざまなインフラ整備が必要とされている。新興国においては日本の技術やノウハウへの期待が高く、ODA案件や国際機関の発注プロジェクトにもチャンスがある。ただし、政治リスクや現地の法制度への対応、為替変動など課題も多く、企業によっては慎重な姿勢を崩さない場合がある。そうしたなか、当社は段階的に拠点を整備し、現地企業と連携しながら受注を積み重ねる方策を採用している。
一方で、業界全体が抱える課題として、人材不足と競争激化が挙げられる。ベテラン技術者の大量退職が進み、若手エンジニアの採用が追いつかない現状にある。また、入札競争は厳しさを増しており、特に設計業務や施工管理業務は競合相手が多く、低価格競争に陥るリスクが否定できない。国や自治体は品質確保の観点から総合評価方式を導入しているが、事実上の価格競争になりがちな側面もあり、経営安定のためには付加価値の高いサービスを提供できる能力が必須となっている。
環境意識の高まりも市場を変えつつある。温室効果ガス削減や生態系保護、自然エネルギー導入などが求められるなか、建設コンサルタントにはより持続可能な設計や環境負荷を軽減する技術の導入が求められる。BIM/CIMを活用した設計工程の省力化や、AIによる大量データ解析によって災害リスクを評価しやすくする取り組みなど、新技術への投資も大きな潮流になりつつある。建設コンサルタント企業がIT企業や研究機関と協業し、スマートシティや高度インフラ管理を提案する場面が増えており、DX推進が競争力を左右する要素になっている。
このように、日本国内の公共投資は長期的に減少が見込まれるとされつつも、防災や老朽化対応など特定分野の需要は継続し、海外を含めて一定の成長余地がある。デジタル技術と建設技術が融合する転換期において、多様な専門領域をグループ内に抱えた当社には新ビジネス創出のチャンスが潜在していると考えられる。社会インフラの持続的維持が課題となるなか、総合コンサルタントとしての当社の役割は引き続き重要性を増すだろう。
業績動向

(1) 直近の業績概要
当社グループの直近3年間における連結売上高は30,000百万円台半ばから37,207百万円へ拡大した。決算説明資料によると、官公庁を中心とする公共投資の安定需要に支えられ、大型案件や補償コンサルタント領域の受注が増加していることが背景にある。国土強靭化の推進や防災意識の高まりを追い風に、道路や橋梁の修繕、河川堤防の強化などの案件を積極的に獲得しており、年間を通じて安定的な売上計上が可能となっている。
M&Aの効果も売上拡大に寄与している。北海道や東北地方など、豪雪や寒冷地帯のインフラノウハウを持つ地域コンサルタント企業を傘下に収め、そこで培われた専門技術をグループ全体に波及させることで、地方自治体からの受注増につなげている。また、海外事業ではアジア諸国を中心に道路や上下水道などの基礎インフラ案件を受注し始めており、現地法人によるビジネスマッチングや入札参加が段階的に成果を上げている。ただし、海外売上高の占める割合はまだそこまで大きくないため、中長期的にはさらなる拡大が見込まれる。
利益面では、経常利益が4,700百万円前後で推移している。補償や調査など高付加価値業務の案件増加による収益貢献がある一方、人材確保やDX投資に伴うコスト負担も生じており、利益率の向上はさほど大きく進んでいない。労務費が構造的に増加する傾向にあるが、官公庁の公共案件は比較的確度が高く予算化されるため、長期的に安定したキャッシュフローを得やすい特徴もある。特に近年は国土強靭化関連の大型案件が増え、これらが連結ベースの売上を押し上げた。ただし、施工監理や設計の一部では競争が激しく、入札価格が想定より低く設定されて利益率が圧迫されるリスクも指摘されている。
単体ベースでみると、当社が直接行う事業の売上高が1,903百万円に達し、経常利益は1,439百万円へ拡大した。この背景にはグループ会社の管理・調整役としての機能だけでなく、一部のコンサルティング案件を直接引き受けている事情もある。特に海外拠点設立や新技術の導入時に当社が主体となって投資するケースがあるため、将来的に新市場での売上拡大が期待される。今後は子会社が担う国内事業と当社が主導する海外事業の両輪で、安定成長と新規開拓を同時に追求する狙いが示唆されている。
過去3年の推移を見ると、売上の伸長に比して利益率は横ばいに近い水準であり、労務費や外注費の増加が利益を圧迫している。働き方改革や技術者不足への対応を進めながら、いかに利益率を維持または引き上げるかが課題とみられる。一方で、自己資本比率は65%以上に達しており、財務的な安定感は際立つ。公共事業中心のビジネスモデルは大きな景気変動の影響を受けにくく、M&Aにより地域や専門分野を広げる余地がある点も見逃せない。全体としては売上面での拡大基調が続く一方、利益面の課題と投資コストのマネジメントをどう行うかが注目点といえる。
(2) 損益計算書の分析
当社グループの損益計算書を見ると、売上高に対する売上原価と販管費が大きな割合を占める。人件費や外注費が多く発生する建設コンサルタント業特有の構造であり、案件数や案件規模が増えると、それに対応する技術者数や専門家の派遣コストも増加しやすい。公共事業は入札段階で利益率がある程度見込めるとはいえ、競合他社が多い分野では落札価格が下がりやすく、当社としては高付加価値領域を中心に受注を増やすことで利益確保を図っている。
営業利益率に関しては、国土強靭化や補償コンサルタントの活況に助けられ一時的に底上げされるケースがあったが、全体的な改善幅は限定的である。先端技術導入やICT投資に伴う費用が販管費として計上され、利益率向上を阻む要因になっている面も否定できない。しかし、こうした投資は長期的に見れば業務効率化やコスト削減につながる可能性が高く、さらに新規サービスの開発による受注拡大が見込まれるため、短期的な利益圧迫は戦略的な側面があるともいえる。
経常利益は営業利益に金融収支を加減して算出されるが、当社グループの場合、財務状況が安定しているため借入金利負担が相対的に小さく、経常利益率は営業利益率と大きな差がない。補償コンサルタントや調査業務を拡充することで全体の利益率を底上げする方針を掲げており、上手くシフトが進めば損益計算書上の利益がさらに積み上がる可能性を持っている。DX投資やM&Aに伴うのれん償却が利益率に影響を与えるリスクはあるが、当社は複数の収益源をすでに持っているため、リスク分散効果も期待できる。
(3) 貸借対照表の分析
貸借対照表上では自己資本比率が約65%を超えており、財務の安定性が高い。この背景には、公共事業中心のビジネスモデルによる安定したキャッシュフローの確保と、プライム市場上場企業としての信用力の高さがあるとみられる。有利子負債はM&Aや設備投資の資金として一定規模存在するものの、過度なレバレッジをかけている状況にはない。資産面では売掛金や未成工事支出金など、公共工事の進捗に連動した勘定科目が多くみられるが、決算期末時点で偏りが大きくならないようグループ内で調整が行われているようだ。
特に自己資本比率の高さは、追加投資や海外展開の加速を図るうえで大きな強みといえる。金融機関からの資金調達がスムーズに行われやすく、将来的に大型のM&A案件が発生しても、財務リスクを抑えながら実行できる可能性が高い。流動比率も十分な水準を維持しているため、突発的な支出が発生した場合でもキャッシュフローが枯渇するリスクは低いと判断される。決算説明資料によると、今後も安定した公共工事の受注が続くと期待されており、貸借対照表の健全性は維持される見込みが強い。
(4) キャッシュフロー計算書の分析
キャッシュフロー計算書では、営業キャッシュフローが公共事業の着手金や中間金を起因として安定的にプラスを確保している。工期が長期化する案件では、期中に資金回収が遅れることもあるが、案件数が増加している段階では複数プロジェクトからの入金が平準化されるため、全体としては安定したキャッシュインの流れになっている。補償や調査など比較的短期で成果を求められる案件が多い点も、キャッシュフローの安定化に寄与していると考えられる。
投資キャッシュフローはドローンや3Dスキャナーなどの調査機材、ソフトウェア開発、システム統合などへの投資が増加しており、近年はM&Aに伴うキャッシュアウトも見られる。これらの投資は即時に利益へ反映されるものではないが、中長期的に業務効率化やサービスの高付加価値化を目指すうえで欠かせない領域だと位置づけられている。財務キャッシュフローは配当支払いのほか、借入金の返済や新規調達がバランスよく行われているが、自己資本が高いことから大規模な借入依存には至っていない。
フリーキャッシュフローはプラス圏で安定推移しており、当社が成長投資と株主還元を両立できる余地を持っていることがうかがえる。公共案件の確保によって将来キャッシュフローがある程度見通しやすいことも、リスク管理を行ううえで有利に働く要因となっている。今後、海外展開や大型M&Aに踏み切る場合でも、一定のキャッシュバッファが活用できるため、財務上の柔軟性は十分高いと推定できる。
(5) 業績指標の分析
ROE(自己資本利益率)は直近で10%前後となっており、自己資本が増加傾向にあるなかで、利益を一定程度確保しているといえる。ROA(総資産利益率)は1.5%前後で、資産全体を有効活用している度合いとしては大手企業と比べるとやや低めだが、公共事業の安定収益とM&Aによる資産拡大が背景にあり、業界としては許容範囲内とみられる。EBITDAについては、ここ数年少しずつ増加しており、先行投資をこなしながらキャッシュ創出力を高めている点が評価できる。
配当性向が約60%で推移していることから、利益の過半を株主還元に充てているが、残りの利益は積極的に内部留保して事業拡大やM&Aに資金を振り向ける方針を明確化している。決算説明資料によると、売上に占める設備投資比率は新技術導入や海外事業強化に伴い徐々に上昇しており、DX推進に関するシステム費用や人材育成費用の増大を計画的に実行している。これらの指標を総合的にみると、安定感を維持しながら成長路線を模索する経営スタンスがうかがえ、特定の指標が極端に悪化している様子は確認できない。
中期経営計画と成長戦略


(1) 中期経営計画の概要
当社グループは中期経営計画で、国内における老朽インフラ更新需要の取り込みと海外市場への段階的拡大を主要な成長ドライバーと位置づけている。国土強靭化関連や防災・減災案件などの長期需要を国内基盤として収益を安定化させながら、アジア地域のインフラ整備案件に参画していく方針が示されている。具体的には、(1)補償コンサルタントおよび調査業務を軸とした高付加価値サービスの拡大、(2)DX投資による業務効率化と新技術のサービス化、(3)M&Aや業務提携を通じた地域企業・海外企業との統合、の三つを柱として掲げている。
国土交通省や地方自治体が進めるインフラ更新計画には橋梁やトンネルの大規模補修、河川や海岸防災工事など長い期間にわたる案件が多く含まれ、安定的な受注源となりやすい。加えて、防災に対する意識が高まるにつれ、補償コンサルタントや先端調査業務の重要度が増し、ここで十分な実績を重ねれば高収益案件を獲得しやすくなる。海外は政治や経済など不確定要素が大きいが、日系企業にとってはODAや現地政府案件など取り組みやすい機会も存在し、当社は日本国内で培った技術と知見を輸出する戦略を段階的に進めるとアナウンスしている。
DXに関連しては、BIM/CIM技術の導入やクラウド型のプロジェクト管理システムを強化することで、紙や従来型の手作業工程を削減し、生産性と品質を同時に高める施策を展開中である。これに伴い研修制度や社内インフラを整備し、新技術に対応できる人材の育成を急ぐ方針を打ち出している。中期的にはこうしたDX投資を業務効率の大幅な改善につなげ、案件対応力を強化してさらなる受注拡大を狙う見通しである。公共事業の入札においても、ICT活用やコスト削減の提案が評価ポイントとなるため、DX推進は差別化戦略としても重要視されている。
(2) 投資計画と重点施策
当社グループは中期経営計画で示した目標を達成するため、大きく分けて人的投資と技術投資を重点施策として位置づけている。人的投資では、防災や補償、環境など専門領域に強い人材を積極的に採用し、既存社員の教育訓練に注力する考えを示している。技術者向けには資格取得支援や研修制度の充実を進める一方、若手社員の離職を防ぐための働きやすい環境づくりにも投資を行う。実務にAIやクラウド技術を取り入れる際のノウハウ共有も重要テーマであり、中長期的に人材のレベルアップを図ることで業務品質と収益性を高める狙いがある。
技術投資に関しては、ドローンや3Dスキャナーによる高速・高精度な調査を実現する機材導入、BIM/CIMや地理情報システムの高度化、さらには独自の解析ソフトウェア開発などが挙げられる。国土交通省が推進するi-Constructionに対応できる企業は入札競争で優位に立ちやすく、当社はDX投資を通じて案件取得の競争力を上げようとしている。また、M&Aや業務提携を通じて不足する技術領域や地域顧客基盤を補完する方針を掲げており、地域企業との連携で補償交渉や環境調査などの高難度案件を受注できる体制づくりを目指している。
一方で、過度な投資拡大による財務リスクにも注意を払っていると見られ、自己資本比率を一定以上の水準で維持しながら段階的に投資を実行する計画が示されている。投資の成果は売上や利益率の上昇だけでなく、海外事業の伸長や新規分野での案件獲得にも波及する可能性があり、総合建設コンサルタントとしての存在感をさらに高める意図がうかがえる。
(3) 新規事業・事業別成長戦略
当社の新規事業としては、災害リスク評価や環境モニタリングなど先端分野を組み合わせたコンサルティングサービスが挙げられる。地形データや気象データ、地質データなどをAIで解析し、災害予測や防災対策を提案する仕組みを拡充する予定であり、建設コンサルタントという枠を超えて幅広い領域へ進出する可能性がある。また、海外プロジェクトでは、補償と防災ノウハウの一体提供が競合企業には少ない強みとして認識されており、橋梁建設や上下水道整備などと合わせてトータルパッケージで提案する形を目指すとしている。
事業別にみると、総合建設コンサルタント事業では大規模プロジェクトの施工監理や設計支援の受注をさらに拡大し、補償コンサルタント業務では用地交渉や権利調整を一手に引き受ける体制を強化していく方針である。調査業務では先端技術を用いた精密測量や環境アセスメントの需要拡大を見据え、地方自治体向けや民間企業向けの提案営業を強める動きが進むとみられる。これら既存の三つの柱をレベルアップさせることに加え、新興市場への参入や防災×ITの複合領域で独自色の強いサービスを育て上げる戦略が当社の成長エンジンとして位置づけられている。
ニュース・トピックス
(1) 最新の企業ニュース
当社グループでは近年、大きな動きとして地域コンサルタント企業の買収や海外プロジェクトの受注拡大が報じられている。北海道近代設計(株)のような寒冷地設計ノウハウを持つ企業を傘下に収めた事例では、豪雪地域向けインフラの補修技術がグループ全体に波及し、地方自治体からの大型案件を獲得する成功事例が確認されている。決算説明資料によると、こうしたM&Aの成果が売上だけでなくエンジニアの技術水準向上にもつながり、グループ横断での人材活用が進展している。
また、防災に関連してはエイト日本技術開発(株)が自治体向けに災害時の緊急調査や復旧計画のコンサルティングを包括的に引き受ける協定を締結し、大規模水害が発生した際の被害想定や避難所計画の見直しなどで成果を出している。このように行政と連携して地域の防災力を高める取り組みが評価され、追加の委託業務や新たなプロジェクトへと発展する動きが目立つ。国土強靭化関連の予算配分が拡充されるなか、当社グループの防災ソリューションが多方面で注目されている。
海外ニュースとしては、アジアの新興国で道路や上下水道、都市インフラの整備計画に参画する形でコンサルティング業務を受注し始めており、現地法人を通じて自治体や政府機関と協力する動きが活発化している。特に社会基盤の未整備が顕著な地域では、補償交渉や地域住民への説明プロセスが不透明なケースが多く、日本式の丁寧な交渉ノウハウを持つ企業が歓迎される傾向がある。当社グループはこの強みに注目し、調査・設計・補償のオールインワンモデルを提示している。試験的な受注が順調に進んだ事例があり、今後はさらなる拡大を図る予定と伝えられている。
プライム市場への移行後、投資家向けに行われた説明会では、DX推進の最新成果やM&Aの進捗状況が報告され、株主重視の方針と成長投資の両立を明確化している。具体的には、配当水準を維持しつつキャッシュフローを技術投資と海外展開へ回し、建設コンサルティング企業として先進的な地位を確立する戦略を表明した。この結果、決算説明資料でも今期および来期以降の公共工事受注見込みが堅調であること、海外案件が緩やかに増えていく見通しであることが示唆されている。
さらに、補償コンサルタントと調査業務に関しては、国土交通省の取り組みを背景にICT活用度を高める政策が進められており、当社グループは早い段階からドローンやAI解析を実務導入してきた利点を生かして、同業他社との差異化を一層進めている。こうした動きにより、新規案件の入札で総合評価点が向上しやすくなり、長期的には受注規模がさらに拡大する可能性がある。各子会社の機能強化や組織再編のニュースも散見され、グループ全体が緩やかな事業拡大と効率化を並行して行っている点がトピックスとして注目される。
会社概要

(1) 基本情報(会社概要、所在地など)
当社は東京証券取引所プライム市場に上場している純粋持株会社で、本社は東京都内に所在する。資本金は2,803百万円で、連結子会社は21社に及ぶ。エイト日本技術開発(株)をはじめとする総合建設コンサルタント企業や補償コンサルタント、調査業務に強みを持つ企業を束ねており、官公庁向けのコンサルティング案件を主力事業としている。官公庁の公共事業をはじめ、海外でもアジア圏を中心に現地法人を設置して道路や上下水道などのインフラ案件に取り組んでいる。
グループ全体としては測量、地質、環境、補償、設計、施工監理など多岐にわたる業務をカバーし、公共事業のライフサイクル全般に携わる総合サービス体制を整えている。プライム市場に上場したことでガバナンスや開示体制の整備を一層進めており、決算説明資料を通じた定期的な情報提供や投資家対応にも注力している。多数の拠点が全国各地に配置されており、地域密着型の営業と技術サポートを行う点が特徴的である。
(2) 沿革と重要なマイルストーン
当社の起源は2007年にエイトコンサルタント(株)と日本技術開発(株)が株式移転によって共同で設立したところに始まり、同年に東京証券取引所に上場した。その後、2008年には計測事業の分割や株式譲渡を通じて日本インフラマネジメント(株)を設立し、2009年には日本技術開発(株)の建設コンサルタント事業をエイトコンサルタント(株)へ承継するなど、グループ内での再編を相次いで行い、2010年に近代設計(株)を子会社化することで橋梁や道路設計などの専門領域を拡充した。2015年にはエイト日本技術開発(株)がEJビジネス・パートナーズ(株)を吸収合併するなど、グループ構造の効率化を推進してきた。
2017年以降は北海道近代設計(株)やアークコンサルタント(株)、アイ・デベロップ・コンサルタンツ(株)など複数企業の子会社化を行い、寒冷地設計や補償分野、環境調査分野などの強化を図った。東京証券取引所の市場区分再編に伴いプライム市場へ移行し、国内外でのM&Aや新規投資を行いやすい資金調達環境を整備している。こうした一連の沿革により、当社は総合建設コンサルタントとしての幅広いサービスラインを形成し、地域特化の企業を巻き込みながら全国規模で案件を獲得できる体制を築いた。
(3) 組織体制と主要な経営陣
当社は純粋持株会社としてグループ各社を統括し、取締役会を頂点にしたガバナンス体制を敷いている。代表取締役社長や取締役メンバーは公共事業やコンサルタント業界に長年携わってきたベテランが中心となり、防災や環境、海外事業など各領域に精通した人材が経営を支えている。連結子会社は総合建設コンサルタント、補償コンサルタント、調査業務など得意領域ごとに分かれており、それぞれの社長や役員が現場に近い位置で意思決定を行いながら、グループ全体方針に従って事業を推進する仕組みを構築している。
監査役やコンプライアンス委員会などチェック機能も整備されており、プライム市場上場企業としてのガバナンス強化を進めている。M&Aを通じて子会社が増えたことで組織体制は複雑化しているが、本社と各子会社の間で情報共有を徹底し、業務の重複や無駄を減らす施策を随時実施している。主要な経営陣は公共工事の現場経験者や学術的知見を持つエンジニアが多く、技術面とビジネス面双方を熟知した意思決定が可能な点が特徴である。
株主還元
(1) 配当方針と履歴
当社は安定的な株主還元を基本方針とし、配当性向をおよそ60%で維持している。一株当たり配当額は13期の503円から17期の555円に増額されており、決算説明資料でも中長期的な配当の継続・拡大方針を示している。公共事業が多いため業績が極端に変動しにくい点や、自己資本比率の高さが背景にあると考えられ、一定程度の利益が確保できた場合には株主還元に充当する姿勢を鮮明にしている。
ただし、M&Aや海外事業への投資を重視する方針もあり、配当を最優先するわけではない。持続的な利益成長によって配当原資を拡大させるアプローチであり、必要に応じて適切な水準の配当を行いながら内部留保を積み上げるバランス型の戦略を採用している。国内外での事業拡大が進み、利益が着実に増加すれば、一株当たり配当額のさらなる上積みが期待される余地はあるが、同時に経営陣は財務健全性を保つ方針にも言及している。
(2) 自社株買いとその影響
当社は自社株買いについて、機動的かつ慎重に判断すると公表しているが、足もとでは大規模な自社株買いを行っていない。プライム市場での流動性確保やM&A資金の温存を重視する姿勢がうかがえ、現状では積極的に自社株買いに踏み切る計画は示されていない。財務諸表に大きな余力があるとはいえ、DX投資や海外拠点拡充、地域企業の買収など成長に直結する投資が優先されているとみられる。
自社株買いは株主還元と一株当たり指標の改善に直結する手段だが、成長期にある企業が優先的に実施するかどうかは意見が分かれる。経営陣は今後の投資機会を多面的に見据えたうえで、必要に応じて自社株買いを選択肢とする立場を取っているため、現時点では配当重視の還元策を軸としつつ、株価動向や事業展開の進捗次第で柔軟に判断する方針が読み取れる。現状、自己資本比率の高さは維持されており、将来的に大型投資が一巡してから自社株買いを検討する余地は残されている。
投資リスク
(1) 業績変動要因
当社の業績は公共事業に大きく依存しているため、政府や自治体の予算編成次第で受注規模が左右される可能性がある。景気後退局面や財政再建が重視される局面では公共投資が削減されやすく、新規案件の落ち込みに直結するリスクがある。逆に国土強靭化や防災予算が拡充された場合は、大型案件を複数受注しやすくなり、業績が押し上げられる展開が期待できる。さらに、地域密着型のグループ企業によって地方自治体の案件を獲得しているが、地域経済の減速や人口減少などで税収が伸び悩むと、自治体のインフラ投資が抑制される懸念もある。
入札競争による落札価格の低下もリスク要因となる。大手ゼネコンや大手コンサルタントが低価格で応札すれば、利益率が厳しくなる可能性がある。特に長期的な工期を要するプロジェクトでは、設計変更や追加対応が生じるたびにコストが膨らむが、契約条件によっては十分にコストを転嫁できないケースがある。さらに、グループ内で人材不足が深刻化すると外注費が増え、人件費の上昇やサービス品質の低下につながりやすい。こうしたファクターが重なると、当社の業績を一時的に圧迫する要因になりかねない。
(2) 業界固有のリスク
建設コンサルタント業界全般に共通するリスクとして、人材の高齢化と若手不足が深刻化している。技術者や補償コンサルタントの実務は経験とノウハウが必要であり、ベテラン社員の退職が進むなか次世代を担う若手を十分確保できない企業が増えている。加えて、労働時間や働き方の改革が進む一方、プロジェクト自体は長時間労働を伴いやすく、若手が敬遠する状況が生まれがちである。ICTを活用し効率化を図る取り組みが進んでいるが、業界全体の構造変化には時間がかかるとみられる。
また、入札制度の変更や公共投資の重点分野転換など、政策リスクが常に存在する。防災や環境関連に大きく予算が割かれる期間もあれば、景気対策として道路や下水道、都市再開発が優先されるタイミングもある。企業としては多様な分野の技術を揃えて変化に対応する必要があるが、専門領域を広げすぎると人材確保や設備投資が膨れ、収益率が下がるリスクがある。このバランスを取り損ねると、企業全体の収益構造が脆弱化する可能性がある。
(3) 財務・経営上のリスク
当社グループはM&A戦略を積極的に進めてきたが、大型買収の際はのれんの増大や有利子負債の増加が避けられない。買収先企業が予想通りの収益を上げられない場合には、減損リスクが顕在化する恐れがある。さらに、海外展開を拡大すると為替リスクや政治リスクが発生するほか、現地での法規制や税制を遵守しながらガバナンスを強化する負担が大きくなる。海外子会社の管理が不十分であれば、不正会計やコンプライアンス違反につながり、グループ全体の信用を損なう結果となる懸念もある。
公共事業は安定性が高い反面、プロジェクトの契約形態や支払い条件によってはキャッシュフローが偏る場合がある。特に大規模案件の工期延長や入札遅延が重なると、売上計上が後ろ倒しになる一方、技術者や下請け費用の支払いが先行して資金繰りに影響が及ぶ可能性がある。さらに、DXやAIなどの先行投資が期待ほど早く収益化しない場合、販管費の増大が経営を圧迫する局面もあり得る。こうしたリスクを総合的に管理していくには、プロジェクトの選別と投資回収の計画性が不可欠となる。